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別冊・詩と小説で描く「愛の世界」

故郷岩手の女。其の一

この作品は「東日本大震災」発生の三年前に書かれたものです。

~突然のリストラ策~
岩手の女1-1
私は10年前に会社をリストラされ、其れまで住んでいた町と妻とも別れて、
岩手の生まれ故郷に帰り再出発を果たした男です。

昨今のリストラの嵐に翻弄され先行きに不安を感じて折られる方々に、
「人生には挫折もあれば再起もある」生きる事に前向きで居れば道は開ける。
と私のささやかな経験をお話したいと思います。

その日は、朝から風はなく、ただ居るだけで汗が噴出して来て、
シャツが肌にへばりついてしまうほど暑い日だった。
何時ものように同じ時間に家を出で、同じ電車に乗って、
同じような時間に私は会社に着いた。

ところが、何時もとは違い、
タイムレコーダーの前には社員達の人垣が出来ていて、何やらざわめいている。
その声が私の姿を見て、ざわめきから突然凛とした静けさに変わり、
人垣は十戒の中でモーゼが造った海道のように、
私の通れる分だけサーッと人垣が割れた。

異様な雰囲気の中を、私は社員達が今まで見ていた壁に近づいていった。
『辞令、右の者、本日付をもって秋田支社出向を命ずる』
とあり、複数の名前が書き出されていた。その中に私の名前も読み取れた。

秋田支社は倉庫が有るだけで、会社としての機能はほとんどない所だ。
そんな所に辞令一枚で突然四人も五人もまとめて放り込む。
嫌なら辞めてしまえという、会社側にとって体のいいリストラ策であることは、
誰の目にもハッキリとしていて、それが私を遠巻きにしている彼たちの口を、
息もつけないほどに沈黙させているのだった。

彼らの目は、同情とも憐れみとも取れる色を深く滲ませていた。
それでいて、明日は我が身だということを、
口には出さずとも皆が判っている顔をしていた。

私は血液が足元に向かって流れ落ちる音を耳鳴りのように聞きながら、
其処に居た堪れず、その場を離れて、自分がこれまで居城にしていた部長室に入った。


岩手の女1-2
私が高校を卒業してすぐ、岩手から身一つで上京し、この会社に入社してから、
三十年以上に成っていた。当時は従業員が十二、三人いるだけの、
家族的な会社だった。社長を含め全員が身を粉にして働いた。
そして二百人を超す会社にまで築き上げ、年商にしても当時とは比べようも無い、
優良な企業に育て上げてきた。その原動力となった者がいまボロ雑巾の様に
放り出されようとしている、我々だったのである。

暫くすると、辞令に名前が載っていた、
「山中・木田・斉藤・西尾」の面々が部屋に遣って来た。
いずれも創業期から貢献してきた者ばかりだ。
突然の辞令で顔色を失い、浮き足立っていた。

「山崎さん、あちらへ(秋田支社)大人しく行くんですか?」
課長の木田が今にも泣きそうな顔をして、私に詰め寄ってきた。
「交渉の余地はないんですか?」
斉藤は上ずった声で言った。怒りで握り締めた拳が震えている。
「こうなったら、辞令通り、全員で倉庫番でもやりましょうや。
 バリバリの腕っこきがズラーッと揃って、倉庫番。
 面白いじゃないですか。意地を見せてやりましょう」
家を買ったばかりの西尾は、無理に作り笑いを浮かべて言った。
山中はそれを聞いて、ウンウンと頷いている。

「西尾君はまだ若い、行けばいい。オレはもうご免だ。
 第一、秋田弁などオレには理解できんし、
 南国生まれのオレは寒い所が苦手だ。辞表を出す事にするよ」
木田は力の無い声で言った。
「それはちょつと待て、交渉の余地はまだ有るはずだ」

私は木田を制し、受話器を取って社長と会うために、電話を入れた。
すぐに秘書の金井洋子が出て、社長はまだ出社していないと言う。
私達の行動を予想し、交渉を避けるため、自宅にでも居るのだろう。
ワンマンの社長らしい性格と動きは、最初から飲み込んでいたし、
交渉の余地は殆ど残されていない事も理解していた。
しかし、事は私一人の問題ではなかった。

秋田に行くにも辞めるにも、それぞれの生活背景を抱えた大きな問題である。
少なくとも私たちにとっては。
岩手の女1-3
私は事前の電話もせず、直接、社長の自宅に交渉に行った。
電話をしなかったのは、つまらない用事を作って逃げられないようにするためと、
一人で行ったのは、大勢で押しかけて感情的になるのを避けたいと思ったからだ。

案の定、社長は自宅に居て、婦人の綾子が応対に出た。
綾子は私の顔を見るとその美しい顔を強ばらせた。
「山崎君・・・いえ、山崎さんお久しぶり」
「奥様はお元気そうで、何よりです。益々お美しくなられた」
「まあ、ご冗談を。山崎さんはお世辞も上手になったんですね。主人、ただ今、参りますわ」
綾子は私を応接間に残すと、さり気なく部屋から出て行った。

私と綾子が会ったのは、実に十年振りの事だ。何の用事だったのか、
今では忘れてしまったが、社用を理由に綾子から呼び出されて、
たった一度だけ体の関係を持った事があった。

其の頃の社長は、連夜の接待で僅かな睡眠をとるだけの帰宅が続いていた。
もっとも接待と言っても、その実態は仕事なのか女遊びが目的なのか分からない。
とにかく、綾子を放ったらかしだったのは事実のようだった。

そのために、熟れきった女盛りの体を、綾子は悶々として持て余し、
ついには我慢出来なくなって、純朴だった頃の私を思い出し、『どうにでもなる男』
とでも思ったのか、誘惑してきたのだ。

綾子のセックスは、大人しそうな顔に似合わず、淫乱で貪欲さを見せ付けていた。
全裸になってベッドに仰臥したまま、全身を舐めさせる奉仕を求めてきた。
舐め疲れて呆然としていると、自分でオマンコを掻き毟り、
「もっと続けるのよ」と金切り声を上げて叱咤された。
仕方なく、力を奮い立たせて、なかば拷問に近い形で肉のタップリ付いた豊満な体を、
私は舐め続けなければならなかったのだ。

私と綾子の関係は、その一度だけで終わったが、その後も、社用を理由に何度も
呼び出されたが、其の度に客先との打ち合わせ等を理由に断り続けた。
  1. 2012/10/16(火) 19:19:03|
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